ビタージャムメモリ
何度も頭を下げて電話を切った。

見守る先生たちに、指で丸を作ってみせる。

ぱっとその顔がほころんで、よかった、と先生が言ってくれたのが聞こえた。



「でも、さすがに10名ほどが限界だろうと」

「その点は考えました、我々の開発に協力してくれていた医療機関があります、そこからも何名か招待していただこうと」

「今の電話中にね、眞下さんから連絡入れてもらったんだよ、前向きな返事が来てるから、期待しちゃおう」



わあ、やった!

定例会は実のある内容で盛り上がり、一般の方向けに資料を簡易化する方針、挨拶する人、プレゼンする人などを次々決めた。

私はそれを、代理店さんと共有すべく、きっちりと記録にまとめた。





「乾杯!」



柏さんの発声で、みんながグラスを合わせた。

野田さんも入れて7名、ほどよくにぎやかでほどよく落ち着いた居酒屋の、奥まった席で座は始まった。

先生は上座、私は下座なので、残念ながら遠いけれど。

それでも、飲んだり食べたりしている姿を見られるだけで新鮮で、会議がうまく進んだこともあって、私はまたもや浮かれていた。



「いいなー、こういう店、職場の周りに欲しいっすよね」

「ほんと何もないもんな」

「お昼はどうされてるんですか?」

「100%、食堂ですね、出ても何もないので」



答えてくれた先生のグラスがもう空なのを見て、私はドリンクのメニューを手渡した。



「ここ、ワインも豊富なので」

「本当だ、ボトル入れたらつきあう人」



はいっと柏さんはじめ、プロジェクトの人たちが手をあげる。

みんなお酒好きらしい。



「何にする?」

「眞下さんにお任せしまっす」

「お前たち、考えるのが面倒なだけだろう」


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