ビタージャムメモリ
「僕も早く気づいてフォローすべきだったね、申し訳ない」
「リカバーはどういう方向がいいですか? ほとぼりが冷めるまで触れずにいたほうがいいのか、頭を下げに行ったほうがいいのか」
「ちょっと近年の様子、探ってみるよ」
「よろしくお願いします」
野田さんの言葉に、部長はさっそく、昔からおつきあいのある媒体社さんや他社の広報さんと連絡を取り始めた。
席に戻る途中、野田さんが肩を叩いてくれる。
「気にしなくていいよ、香野さんのミスとかじゃないし」
「ですが…」
「僕もあそこと昔つきあいがあったなんて全然知らなかったし、不可抗力と受け止めて、カバーに専念しよ」
「はい」
返事は力のないものになった。
自分を責めても仕方ないとわかってはいるけれど。
先生たちプロジェクトの人たちが全力を挙げて協力してくれているところに、水を差してしまったような気になるのは避けられない。
情報がどんなふうに広まっていくかをコントロールするのが、広報部の本来の仕事なのに。
これじゃ足を引っ張っただけだ。
「一応プロジェクトの人たちにも報告メール入れておくね、こっちでなんとか火消ししますからって」
「あ、私…」
やります、と言いかけて、先生のあの冷たい目を思い出した。
言葉を途切れさせてしまった私を、野田さんはたぶん優しく解釈してくれて、「僕がやっとくよ」とにこっと笑ってくれた。
情けなさに、消えてしまいたくなった。
明日には、定例会がある。
先生に会わないといけない。
そのことを考えるだけで、目の前が真っ暗になるほど落ち込む。
私、どうしたらいいですか。
先生…。