性悪女子のツミとバツ
本編
プロローグ
俺の腕の中でスヤスヤと寝息を立てる。
白い肌と、華奢な身体。
俺の方へすり寄るように身じろぎすれば、栗色のセミロングの髪が胸元をくすぐった。
今、腕の中に抱いているのは。
単なる職場の後輩で、恋人ではない。
おまけに、とんでもなく性格の悪い女だ。
オシャレや色恋沙汰には熱心だが、仕事のやる気はない。
何とか周りの男に取り入って、毎日やり過ごしているような女。
騙されたわけではない。
彼女の本性も知っている。
それでも。
俺は彼女に恋に落ちた。
俺の腕の中で眠りながら、他の男との結婚を夢見ているような女を、真剣に愛おしいと思っている俺は、きっと大バカだ。
きっかけは、些細なことで。
たった一度きりのつもりで気まぐれに抱いた彼女を、ただ何となく放っておけなくなくて、週末には必ず彼女を誘う。
不毛だと分かっていても、
止められない。
これまで、人生何事もスマートにこなしてきた俺にとって、初めての経験だった。
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