性悪女子のツミとバツ
特に後遺症もなく、萌は四日目の午前中には、退院できた。
ただし、入院中に精神科の医師から数週間の休養と加療が必要と診断されたため、会社には診断書を提出して、休職の手続きを踏んだ。
退院の日は休日だったため、彼女を病院まで迎えに行く。
「元気だから来なくてもよかったのに」と憎まれ口を叩いた彼女を、無理矢理、俺の家に連れて帰った。
もちろん彼女は自分の家に帰ると抵抗したが、会社から、絶対に一人にしないように命令されたと言えば、渋々付いてきた。
実際には、そんな命令などされていない。
俺が、ただ、一人にしたくなかっただけだ。
「死ぬつもりなんてなかったのよ。」
「ああ。」
「ただ、眠れなくて。病院で薬をもらったんだけど、飲んでも眠れないときがあって。」
「で、飲み過ぎたのか?」
「わかんない、よく覚えてない。」
家に着いて、コーヒーを淹れてから、テーブルで彼女と向き合う。
か細い声で、あの日のことを語る彼女は、まるで他人事みたいに淡々としていた。
事の真相については、入院中に俺から尋ねることはなかった。
医師から入院中は身体を休めることに専念するように言われたためだ。