性悪女子のツミとバツ
「萌は、お母さんにそっくりだな。」
「そう?むしろ、父に似ていると思うわ。目も二重だし。」
「いや、見た目じゃなくて、性格が。」
言われたことがあまりピンとこないのか、萌は俺に続きを促すように首を傾けていた。
「何でも自分の所為にしたがるところが。そっくりだ。」
「何のこと?」
「お母さんは、こんなことになったのは私の所為だと、萌が眠っている間、病室でずっと自分を責めてた。」
ポツリポツリと彼女の母が語ったのは、子どもの頃からの萌の話で、終始、自分に対する反省の弁だった。
『萌は、小さい頃から我慢しすぎる子で。いつも我慢の限界が来るまで何も言わないんです。多分、私が仕事に追われて、あまり構ってやれなかったから…』
そう言って、激しく落ち込む彼女を、隣で萌の父が支えながら言った。
『母さんだけの所為じゃない。俺もあの頃は入退院を繰り返して、ろくに一緒に居てやれなかった。俺の責任でもある。だから、今からでも萌が頼りにしてくれるなら、俺たちはちゃんと助けになってやろう。』
その言葉に彼女は再び顔を上げた。
『そうね。本当にその通りだわ。いつも、お父さんに私は救われるのね。』
そう言って涙を流したまま、微笑んだ彼女は、すでに立ち直っていて。
そして、それから自分を責めることはなかった。
そのやり取りに、信頼し合って助け合ってきた長い年月を感じる。
俺も、萌とこんな関係になりたい。
そんな思いがふと浮かんで、やがてそれは俺の中で強い決意になった。