性悪女子のツミとバツ
いずみさんとなぎさちゃんを病院の入り口で見送ってから、私はこっそりと向かいの薬局へと向かった。
ここは、あの日私が運ばれた病院だ。
今日やって来たのは、誰かのお見舞いではなく、自分の診察のため。
入院した時から、この病院の心療内科がかかりつけになっていて、月に一度カウンセリングを受けていた。
しかし、自宅に戻ってから不眠の症状がひどくなる一方だった私は、次のカウンセリングの日を待つことができずに、仕方なく平日の朝に予約を取り、仕事は午前中だけ休んだ。
呼び止められた時に手にしていた睡眠薬の処方箋は、咄嗟にバッグの中へと隠して、同時に、今ここにいる理由も隠さなければならなかったのだ。
眠れなくても、朝は来る。
彼の部屋を出てから一ヶ月、久々に訪れた眠れない日々は、予想以上に辛かった。
それでも、仕事中は今まで以上に明るく振る舞う。
決して彼には気づかれてはいけない。
私は、完璧だったと思う。
時折、社内で見かける彼は、いつも通り仕事は順調なようで、いつ見ても忙しそうにしていて。
同僚に囲まれて軽く冗談を言い合う姿を見かけては、私はそっと胸をなで下ろしていた。
やはり、彼には彼らしいスマートな人生があるのだ。
私の選択は正しかったのだと、
信じて疑わなかった。
ある日突然、営業部から内線電話がかかってくるまでは。