性悪女子のツミとバツ
その後、「後は任せてもいい?」と言う佐藤さんにしっかりと頷いて、会社に戻る佐藤さんを見送った。
ついでに、私も会社に電話を入れる。
電話に出た主任に慌てて出てきてしまったことを詫びて、彼の無事を伝えた。
病室に戻って、彼の寝顔を見つめながら考える。
何か言いかけては、つぐまれた口。
考え込むように宙をさまよう視線。
こそこそと一人で出掛けていく休日。
秘密にされたマンション購入計画。
あの日、彼からの別れのサインだと思ったものは、全て私を引き留めるためのものだったのだろうか。
勝手に勘違いをして家を飛び出した私に、今更それを尋ねる権利はないかもしれない。
そもそも、あのとき問いただしたところで、私は素直に彼の言葉を受け取らなかっただろう。
結局、私には覚悟が足りなかったのだ。
彼の愛に上手く応える自信がなくて、自分が彼を幸せに出来るとはとても思えなかった。
私にとっては楽園でも、彼にとってもそうとは限らない。
見えない重圧から逃げて、彼のことを疑ってまで守ったのは、弱い自分自身で。
彼の為だと言い続けながら、ただ単に自分可愛さに、彼を傷付けただけ。
私が彼の手を取ったことが、
罪だと言うならば。
それを償う方法は、
最初から一つしかなかったはずだ。
その手を絶対に離さずに、精一杯彼を愛すること。
それ以外に、きっとこの罪を償う術はないのだろう。
持つべきは、去り際の美学なんかじゃなくて。
厚かましくも、愛する人と楽園に居座り続ける覚悟だ。