性悪女子のツミとバツ
田村崇之(たむらたかゆき)、
今まで28年間の人生は、とにかく楽しくをモットーに生きてきた。
自分で言うのも何だが、持ち前の明るく社交的な性格と勘の良さで、だいたいのことは卒なくこなせる。
見た目は佐藤さんのように正統派のイケメンではないが、服装や髪型に気を遣えば、雰囲気でイケメンに見えなくもない程度。
勉強も、仕事も、恋愛も。
もちろん、人並みに努力もしているが、これまで大きな挫折や苦渋を味わうこともなくやってきた。
まさにお気楽な人生だ。
だけど、そんな脳天気な性格でも、やはり失恋は堪えるらしい。
松岡さんの顔を思い浮かべては、今でも思わずため息を漏らす俺は、どうやら、自分で思っていたよりも彼女の事が好きだったのか。
ちっとも進まないタクシーの列の中で、やっぱり今晩はとことん飲み明かそうかと顔を上げた時だった。
「田村さん、タクシー、一緒に乗せてもらっていいですかぁ?」
甘ったるく語尾をのばした問いかけをしてきたのは、会社の後輩、安井萌(やすいもえ)だった。