性悪女子のツミとバツ
「結局、マンション、買ったの?」
ダイニングテーブルで会社に提出する書類を書きながら、ふと思い出して尋ねてみれば、ソファでテレビを見ていた彼は驚いたように振り返った。どうして知っているのか、と顔に書いてある。
「あの日、病室で佐藤さんに聞いた。」
「あぁ、あの人、口止めしてたのに…」
「佐藤さんに聞かなくても、知ってたんだけどね。この部屋出て行った日に偶然引き出しでパンフレット見つけたから。」
「…それ見つけといて、出ていくって、意味わかんないんだけど。」
「だって、違う女の人と住むんだと思ったんだもの。」
「はあ?何でそうなるんだよ。」
「んー、だって少し前から様子が変だったし。いい加減愛想も尽きたのかなって。」
「どうやって、萌に話そうか考えてたんだよ。一緒に住むためにマンション買いました、なんてよく考えたら重すぎるなって。買う前に話すべきか、あの頃は、らしくもなく四六時中悩んでた。」
「あと…朝になったら離れて寝てるし。」
「そりゃ、離れなきゃ襲いそうになるし。半年も我慢できたのは奇跡だろ。」
いつも余裕たっぷりな彼には珍しく、どこかきまりが悪そうに説明をする彼を見て、愛おしさが募る。
思わず、ソファーに座る彼を背後から何も言わずに抱きしめた。
「俺、どうにかして萌を閉じこめておけないか、コソコソずっと考えてた。でも、萌が出て行った時に、それが間違いだったことに気付いた。」
彼は苦笑を漏らしながら、前を見たまましゃべり続ける。
「いくら住み心地抜群のマンションでも、萌が俺と一緒にいたいと思えなきゃ意味ないんだよな。この部屋でひとりになってからすっげえ後悔した。もっとたくさん抱きしめてやればよかったとか、休日も出来るだけ一緒に過ごせばよかったとか、ちゃんと愛してるって毎日伝えればよかったとか。それで萌が安心できるなら、カッコつけずにキスもセックスもどんどんすればよかったんだよな。」
「どんどんって…」