性悪女子のツミとバツ
その日まで
吐き気と倦怠感で、夕方から一気に重くなった体をベッドに横たえて、ぼんやりと天井を眺めていた。
ガチャリと玄関の扉が開く音がして、起き上がろうと身を捩る。
頭を持ち上げようとした瞬間、玄関から向かってくる足音が寝室のドアの前で止まった。
寝室のドアが開くと、手にコンビニのビニール袋を下げた彼が慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「起きなくていいよ。」
起き上がろうとしている私の体を、腕で支えて再びベッドに横たえる。
私は素直にその指示に従った。
頭の中では反発しつつも、怠さのあまり体は素直にならざるを得ない。
彼が纏ってきた、微かなコンビニのスナックメニューの油の匂いにですら、過敏に反応してトイレに駆け込む日もあるのだ。
仕事中は気が張っているからか、そこまでひどくはならない。一番のピークは気が抜ける帰宅後のこの時間だった。
「…お帰りなさい。」
ベッドの中、情けない声を絞り出せば、彼は嬉しそうに言葉を返す。
「ただいま、萌。」
この二年間、毎日のように繰り返された挨拶だけど。
彼は溶けるような笑顔で、甘く囁く。
彼のその表情を見れば、自分がどれだけ大切にされているのかが簡単に分かってしまう。
いつだって彼は、その自信たっぷりな口元を私の前でフワリとほころばせて、私をとことん甘やかすのだ。
その甘さは、どんどん薄れていくどころか、増しているような気さえする。
──特に、この一ヶ月は。