性悪女子のツミとバツ

「特に、慰めてもらうようなことはないけど?」

あくまで平静を保って、強がってみれば、安井はフッと可笑しそうに笑った。

「別に隠さなくてもいいですよ。知ってますよ。松岡さんのこと、コソコソ口説いてたこと。残念でしたね。あんなにしつこく誘ってたのに。」

すべて知られていたことが急に恥ずかしくなり、慌てて彼女から視線を外した。

「馬鹿にしたければ、好きなだけすればいい。」

やけくそになって発した言葉に対しての、彼女の反応はまたしても意外なものだった。

「馬鹿になんてしませんよ。言ったでしょう?慰めてあげるって。私もストレスが溜まってるんで、少し発散したいんです。一晩、付き合ってもらえません?」

彼女の瞳の色が途端に俺を挑発するように変化し、俺はその言葉の意味を理解した。
と、同時に躊躇する俺の腕に、安井萌の腕が絡められた。

「悪い話じゃないと思いますけど。やけ酒して二日酔いになるより、何倍も気持ちイイですし。」

悪魔の囁きに思わず心が動いてしまったのは。
男の性か、それとも気の迷いか。

この後、どうやってホテルに行ったのか、はっきりとは覚えていない。
気が付けば、もつれ合うようにベッドへと彼女を押し倒していた。
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