性悪女子のツミとバツ
薄氷
「遠慮しないで。好きにして。」
最初の一回も、それ以降も彼女は毎回そう言って、俺に身を投げ出す。
てっきり、もっと優しくしろとか、それは嫌、あれはダメとか、沢山注文を付けられると思っていた俺は、随分と拍子抜けした。
「いつも、本命相手の前では猫被ってるから、思いっきり乱れられなくて。」
理由を聞けば、簡単なことで。
要するに、彼女はあの晩、気兼ねも恥じらいもなく、欲望をすべてぶつけられるような相手を求めていたのだ。
実際、ベッドの中ではお互いの欲望を隠すことなく、貪り合うように交わり続けた。
俺自身、こんなに乱暴にコトに及んだのは、初めてで。
普通に付き合っている恋人と、きわめて平和的な行為しかしたことがなかった俺には、ずいぶんと刺激的だった。
絶え間なく嬌声を上げ、あられもない姿をさらけ出して乱れる彼女に、欲望のまま執拗に腰を打ち付ける。
荒い呼吸を繰り返しながら、貪欲に更なる快楽を求める彼女の姿に、何とも言えない興奮を覚えた。
自分の中にほんの少しでもサディスティックな一面があったことに、何より驚いた。
苦しげに、眉を寄せる彼女をもっと追いつめたい。
そして、彼女もそれを望んでいるようだった。
「もっと…」
「ん?」
「もっと、めちゃくちゃにして。」
「いいのか?」
「いいの、ぜったいに優しくしないで。」
彼女は何度も意識を手放して、俺は何度も彼女の中で果てる。