うそつきハムスターの恋人
加地くんの挑発
週明け、月曜日の朝は秋晴れのとてもいいお天気になった。
私の熱はすっかり下がり、喉の痛みも頭痛もおさまったけれど、鼻声だけは治らない。
風邪をひいた後はいつもこうなってしまう。
「でも、その声セクシーで俺は好き」
朝ごはんの支度をしていたら、夏生がやってきてカウンター越しに、なんでもいいからしゃべってみて、と言う。
「うるさいな」
「おお、セクシー」
私がわざとしかめつらをすると、夏生は声を出して笑った。
違うのに。
ありがとう、って言いたいのに。
ずっと、そばにいてくれてありがとう、って。
だって、私はまだ一度もありがとうを言ってない。
金曜日から日曜日まで、私はほとんどの時間をベッドの中で過ごした。
夏生はアニメを見せてくれたり、本を読んでくれたり、おかゆを作ってくれたり、スポーツドリンクを買ってきてくれたりと、あらゆる限りのお世話をしてくれた。
ほとんど甘やかされた、と言ってもいい。
「体を拭いてやろうか」という提案だけは丁重にお断りしたのだけど。
「ネクタイ締めて、しずく」
夏生が持ってきたのは、紺地にストライプ柄のネクタイだった。
「今日はしずくとお揃い」
どうにかこうにか締め終わると、夏生がそう言って笑った。
「お揃い?」
意味がわからず聞き返した後、自分のスカートを見て気づいた。
私は紺色のフレアスカートをはいていた。
ストライプ柄の。
「気づく人、いるかな」
夏生はどこか嬉しそうに言って、靴をはいた。
ドアを開けると、三日ぶりの太陽の光に一瞬目がくらむ。
「病み上がりだからあんまり無理すんなよ。あと、今日は俺エリア会議だから帰り遅くなるし、先に寝とけよ」
夏生は、会社に続く街路樹が並んだまっすぐの道を歩きながら言う。
「ご飯は?」
「会議八時からだし、その前に軽く食べるから今日はいいよ」
そっか。
今日はひとりか。
夏生と一緒に住む前までは当たり前だったことが、今日はなぜか心細く感じられて戸惑った。
私の熱はすっかり下がり、喉の痛みも頭痛もおさまったけれど、鼻声だけは治らない。
風邪をひいた後はいつもこうなってしまう。
「でも、その声セクシーで俺は好き」
朝ごはんの支度をしていたら、夏生がやってきてカウンター越しに、なんでもいいからしゃべってみて、と言う。
「うるさいな」
「おお、セクシー」
私がわざとしかめつらをすると、夏生は声を出して笑った。
違うのに。
ありがとう、って言いたいのに。
ずっと、そばにいてくれてありがとう、って。
だって、私はまだ一度もありがとうを言ってない。
金曜日から日曜日まで、私はほとんどの時間をベッドの中で過ごした。
夏生はアニメを見せてくれたり、本を読んでくれたり、おかゆを作ってくれたり、スポーツドリンクを買ってきてくれたりと、あらゆる限りのお世話をしてくれた。
ほとんど甘やかされた、と言ってもいい。
「体を拭いてやろうか」という提案だけは丁重にお断りしたのだけど。
「ネクタイ締めて、しずく」
夏生が持ってきたのは、紺地にストライプ柄のネクタイだった。
「今日はしずくとお揃い」
どうにかこうにか締め終わると、夏生がそう言って笑った。
「お揃い?」
意味がわからず聞き返した後、自分のスカートを見て気づいた。
私は紺色のフレアスカートをはいていた。
ストライプ柄の。
「気づく人、いるかな」
夏生はどこか嬉しそうに言って、靴をはいた。
ドアを開けると、三日ぶりの太陽の光に一瞬目がくらむ。
「病み上がりだからあんまり無理すんなよ。あと、今日は俺エリア会議だから帰り遅くなるし、先に寝とけよ」
夏生は、会社に続く街路樹が並んだまっすぐの道を歩きながら言う。
「ご飯は?」
「会議八時からだし、その前に軽く食べるから今日はいいよ」
そっか。
今日はひとりか。
夏生と一緒に住む前までは当たり前だったことが、今日はなぜか心細く感じられて戸惑った。