うそつきハムスターの恋人
筋肉痛は翌朝に来た。
体中が痛くて起き上がれない。

「いたーい」

ベッドの中で私はしかめっ面をする。

隣で夏生が「もしかして筋肉痛?」と眠そうに言った。

「足も腕も背中も痛い」

寝起きの夏生は、いつもに増してセクシーな顔と声で「足はわかるけど、他はなんで?」と不思議そうにたずねる。

「わかんない。わかんないけど痛い。起き上がれない」

うつ伏せで枕に顔をうずめたまま、泣き言を言うと、夏生が私の腰のあたりに手のひらを当てた。

ベッドの中でそんなところをさわられたら、ドキドキしてしまうからやめてほしい。

首を傾けて夏生の顔を見ると、夏生はうとうととしながら、

「日曜日だから、起きなくていいよ」

と言うと、小さくあくびをしてまた眠ってしまった。

結局、そのままベッドの中で私たちはごろごろしていた。
ようやく起き上がったのは十時を少し過ぎた頃。

少し動いただけで、顔をしかめてしまう私を見て、夏生は笑いながら、DVDでも借りに行こうか、と提案した。

「いいね」

「夜はおでんが食いたいな」

「いいねぇ」

私はうきうきとしながら、返事をした。

「お昼からビールを飲んで」

夏生が笑いながら言う。

「昼はピザでもとって、今日は自堕落な一日を過ごそう」

それって最高!と返して、私は笑い転げた。
笑うたびに、体中が痛かったけれど、こんな風になんでもない一日も夏生と過ごせることが嬉しくてたまらなかった。








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