うそつきハムスターの恋人
「あの人かな？」

道路の向こう側からこちらに向かって走ってくる男の人を見て私が言うと、加地くんが「ぽいね」とうなづいた。

「すいません、菜摘（なつみ）が迷惑かけたみたいで」

そう言って、その明るい髪色をした男の人はぺこりと頭を下げる。

「尚人」さんはやっぱり喜多さんの彼氏だった。
電話に出た私が事情を説明すると、恐縮しながら「すぐ行きます」と言ってくれたのだ。

「いえ……。迷惑だなんて。私を励まそうとしてくれたんです」

喜多さんの名誉のためにも、私は今日のことをかいつまんで説明した。

尚人さんは笑いながら「菜摘はすぐに熱くなるからなぁ」と言い、寝ている喜多さんをよっこらしょ、と抱えた。

「本当にごめんね。ご迷惑をおかけました。でも、こいつ、いいやつでしょ？　これからも仲良くしてやってね」

私と加地くんはにっこり笑って、はいと答えた。

人のために本気で怒ったり泣いたりしてくれる喜多さんが、私も加地くんも大好きだ。
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