青い星の騎士たち
いつもなら、ここにはフェルトという(暗い)男がいる。
部屋の鍵を渡してくれて、何を持ち出すか紙に書かなければいけないのだ。
「おい!フェルト!」
なおも乱暴にドアを叩くが、中からはうんともすんとも返事がない。
「どうすりゃいいんだよ…」
「開ければよくなくない?」
そう言うと、ロミオはドアに回し蹴りを放った。
ドガァァッ!ミリミリ…バリバリ…ドォォーン!!
静かな地下に場違いな音が響き渡る。
木のドアは、あっけなく部屋の中へと壊れて倒れていった。
「ほら、開いたぞ。ジャスティン」
「お、おう…」
薄暗いその部屋の中には、イスから転げ落ち、びっくり眼でこちらを凝視するフェルトがいた。
黒いロン毛に黒縁めがね、Тシャツにジーンズというちょっと地味なフェルトは、一応オレンジスター校の卒業生だ。
今はこの場所で働いているが、もっぱらヒマらしいので、趣味のフィギュア製作に没頭しているらしい。
確かに今もそうだったらしく、テーブルの上には数体のフィギュアが置かれてあった。
「な…何だよお前ら!」
びっくりしすぎて、声が裏返る。
「ごめ〜ん、フェルトくん。ドア壊しちゃった。ごめんねっ」
かわいく言うロミオに、フェルトはひきつりながらイスによじのぼった。
「謝るなら壊すなよ…」
「つうかおめぇがさっさとドア開けねぇのが悪ぃんだろうが」
フェルトは、倒れたフィギュアをそっと起こした。
「ちょうど今、細かい所の色を塗ってた所なんだよ。だから邪魔されたくなかったんだ」
「だからってなぁ、おめぇよぉ…」
あきれながらフィギュアを見てみる。
制服を着ている女子高生のフィギュアが2体に、猫の着ぐるみを着た女の子のフィギュアが1体、そして、服の色がまだあまりついていない女の子のフィギュアが1体いた。
「気味悪ぃな」
「好きに言えばいいさ」
フェルトはまた黙々と色付け作業に取り掛かった。