夜闇に咲く

そうこうあって。

今は道場にいる。


ついて早々何故か木刀を渡された

「……重い」






木刀なんて持ったことないのに。
「……何言ってんの？鍛錬が足りてないんじゃない？持ったことないわけな……」「うん。」「……」
「審判は俺がやる。」

まじか。でもー、土方さん。この観客は何！？

「あー、この道場で一二を争う奴としらねー奴がやるんだ。気になるんだろ」
視線で訴えると気づいたらしい土方さんは腕を組んでそういった

「…」
わかってはいた。わかっていたが！！

だがこのむかつく総司の手前、無理だとかいったら試合放棄するのかとか言われそうだ
腹をくくってやるしかない。

「……」

日和は手の中にある重い木刀を握りしめた
だが、

「土方さん。竹刀でやりましょう。」

顔を上げると総司が土方さんにそう言うところだった
剣道に、試合にきちんと正々堂々と向き合う。その姿勢に、とても好意が湧いた。

「おきっ！！！！」
「？なにか、言いましたね。」




怖い怖い怖い怖いまた間者だとか言われるとこだったわ！！
今まで総司としか呼ばれていないのに沖田さんとか言ってみろいっぱつK.O.だ

「い、いえ、お名前は？」
「僕に勝ったら教えてあげるよ」

「総司、なぜ竹刀なんだ。」「この人が木刀を持ったことがなくて重いと言っているからです。」


そこはあくまでも僕のせいなのか。


土方さんは驚いた顔をしていたけど、まぁいいだろうと判断したのか僕たちの間をとった場所に移動した

「分かった。それでは、双方、礼。構え。………始め！」

始めの合図はあったが、
動けない。



威圧感が凄い。

どちらか先に動いたほうが狩られる
そう錯覚するくらいの……


気分が高揚する
こういう一触即発の戦い

思わず口の端が上がりかけた




「来ないんですか。なら、僕から。」


沖田総司はそういうが否や大きく一歩踏みだしてくる


まずは、冷静に。耳を澄まして音を聞く。


この広い道場で、しかも刀でないのに天然理心流を使うのは適切でない





柳生新陰流


「ふぅー…」

刃を地に突き立て、左手で鍔元を握り、右手で柄頭を持ち、その上に頭を置く。







「な、何だあの老人みたいな体勢は！」

「やっぱり道場一と聞いちゃ怖気づくか、そらそう…」










沖田自身も驚いていた。
やる気がなくなったのか？と、











━━━まだ、あと少し、3.2.1…


日和はその態勢で総司を見据えた
タイミングを見計らい、足と腕に力を込めた


━━老剣



ガッ













道場がしんと静まった。





今までのうるささはない。



「な……にっ！？」
「くっ！まだだ、」

老人の様な構えを取る事からこの名が付いたこの技。
相手が近付いて来たら、下段から相手を切り上げる。





まさかこの技を初見の相手に一本取れないとは、

やっぱり本場は違う。