夜闇に咲く
目の前の坂本龍馬は眉間にシワを寄せたまま僕を見つめている



「なぜおまんがその様な事を言うんじゃ」




自分のことは差し置いて言った


「ここの近くには新選組の屯所がある。」



「そんくらい知っちょる、わしが知らぬとでも?」





龍馬はカッカッカッと笑った



「じゃあなんでこんな所に」
「お前さんにちいと言っておかなければならんと思うてな」





「……なんだ」



「おまんは京に着てまだ日が浅いから知らんと思うが京の夜は物騒じゃ」

龍馬は僕の後ろの方を見ながら言った

「なんで僕が京に来てまだ日が浅いなんて思うんだ?僕のあなたは初対面なのに」

「昼間、わしが新撰組に追われていた時に会ったろう、それに、様子を見ちょればおまんがここに来て日が浅いことくらいは分かる」

坂本龍馬は少し目を細めていった


「……へぇ、でも、京と限らずに夜は物騒なものじゃないの?」

「……おまんが思うとるものとはすこし違うかもしれん」





抜刀……ッ!!





龍馬は急に前傾姿勢になり柄に手をかけて刀を引き抜いた



……っ間に合わないっ!!




せめてもの抗いで両手を顔の前で交差させた


「うぅっ!!」



衝撃波のようなものが右頬の横を通過したのを感じ取れた








わざと外したのかっ??





少し目を開ける





「えっ!」


後ろを振り返ってみて、
今目に写っている光景が信じられなかった




「りょう、まっ」

そこには


赤く輝く刀身の刀をもつ龍馬がいた


妖魅だ



月明かりに照らされるのとはまた違う。
その刀が発光しているんだ……




「仕留め損ねた、くるぞ!」



日和はその言葉にはっとして龍馬の視線の先を見た

その視線の先には、この世のものとは思えないモノがいた










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