夜闇に咲く
「……目、冷めちゃった」
楽しみで楽しみで仕方ない
おじさんから貰った短刀が、こんな実用的な刀になるなんて、どんなものになっているのだろう
「……あ、れ、起きるの、早くない……?」
総司が目を擦りながら起き上がってくる
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、別に、……今からでもいきたいの??まあ、出来てると思うけど」
「えっ、え!いってもいいの!?」
「土方さんにばれなければね。」
そんなの行くに決まってんじゃん。ね?
「かったっな~♪ぼーっくっの~かったっなーっがくっるっよぉ~っ♪かたなぁぁ~!かぁーたぁーーー」
「ちょっと黙ってくれる?近所迷惑だから」
隣で黒い笑みを浮かべられ、日和は固まった
「……ハイ」
楽しみなんだもん。
「……~っ!行ってくる」
「え」
やっぱ早く会いたいよね!!刀!
「こんにちはー!!!!」
……
あれ?
なんだか店が静か……
「おじさん?」
「……ぁ」
おじさんいた!?
「どうしたの!?」
奥から出てきたおじさんが傷だらけで血が出ていた
「おっ、お、襲われたの!?」
「違うわ」
呆れ顔で否定された
「おーい!ちょっと、僕を置いてくなんて何考えてんの!?」
「総司……」
道の向こうから走ってきた総司もおじさんの手を見て
ぎょっとしている
「……お前、また持ってきたのか、こんどは……総司。お前の刀も作って欲しいのか」
疲れているからかすごい目が鋭い
「えっ、と、まだ集まっていませんよ?」
「こいつが持っとる」
おじさんは僕を指していう
「な、なにを?」
総司も僕をみて信じられないというような顔をする
「え、どういう、こと」
「……まあいい、これが村正だ」
おじさんが差し出したのは質素な装飾のついていない刀だった
さやから抜き出してみる
「ッ……」
やばい
鳥肌、たったよ、
「そいつぁ、この世にあってはならん存在だ。まさかこの手で打つことになるとは思っていなかったわ」
「……ありがとうございます」
刃は波打っていて、刀身は角度によっては次節薄紫色に見えることもあった、そして、龍馬の刀みたいに惹き込まれそうななにかがあった
「それで、この子が持ってるって言うのはどういうことなんですか!」
総司は抑えきれないといった風に、緊迫した表情でおじいさんに詰め寄った
「この刀を、持っている時点で、そうは思っとったが、お前さん禍罪祓いじゃな」
「まが、つみばらい??」
こんなところで禍罪の名が出るとは思はなかった
「刀結晶、持ってるだろ?」
「……なんで、」
知ってるの、そう思ったが、ふと龍馬の言っていたことを思い出す。
「一番隊隊長は、気付いてる……?」
「……」
懐から昨日の戦いで手に入れた刀結晶を取り出す
「これ」
「あ……僕の、刀の、……」
総司は目を見開いて刀結晶を受け取る
「……これ、欲しいならあげるよ」
なんとなく、なんとなくだけど、これは総司に貰われたいって言ってるような気がした
「なんで、だってこれは君が」
「いいから!おじさん!これも作っちゃって!」
おじさんの方を向くとおじさんはげんなりした顔をしていた
「……あぁ、わかったよ、」
「まだこれは妖刀じゃないからな、はぁ……」
疲れ切ったように刀結晶を握って店の奥に消えていくおじさんは、少し可愛そうな気もした