夜闇に咲く
ふた振りの刀
「総司……あの、総司の刀、って言うのは」
帰り道、あれからずっと下を向いて話さなかった総司に聞いてみた
「……菊一文字則宗、僕の愛刀。」
昔話を思い出すかのように言った名前は新選組ファンならではの疑問だった
「え、菊一文字則宗って、あるの」
総司が使っていた刀は菊一文字則宗が代表的とされているけど、実際には存在しなかった、そう言われている
「……菊一文字は、」
そこで話を区切ると総司は走って一直線に向かって言った
「疲れた時には甘味だよねーーーーーー」
え、と思った時にはもうそこの娘さんと話し始めていた
「まっ、まってよ!!!」
話をそらされた気がする……もう、まあ、
「僕も甘味たべるよー!!!!!!」
食べないと頭も働かないよねー!
「おがわりぐだざい」
「あっ、あ、はい!」
「精算はンッどうずるんだよングッ」
「あーモグモグ土方さんに頼もうングング」
皿の山が倒れそうになる度女将さんが慌てて片付けに来る
第1土方さん命!!って感じだったのに金は払わせるんだな……
「ふぅ、もうお腹いっぱいだよ……」
「え??僕まだ入るよ?」
総司のお腹はブラックホールなのかもしれない
「……まだ食べたかった……」
まだ食べたいと駄々をこねる総司を引きずり出して屯所に向かう
もう何も入らないよ……まったく、
まあお金はぜんぶ土方さんの負担にな
「日和」
不意に僕の名を呼ぶ声が聞こえた
雑踏とした街の中でその声だけがやけに鮮明に聞こえたんだ
「……なんで、」
僕の脳が目の前の現実を受け入れたく無いと叫ぶ
なんで、
「なんでお前がここにいるんだ!!坂本龍馬!!!!」
何でここにいるの、龍馬