夜闇に咲く
新選組の僕達と長州の龍馬とでは敵対関係、命を狙われる存在であることぐらい龍馬自身も分かっているはずだ
なんでわざわざ自分の身を危険に晒すようなことをするんだ
「どうして……?」
「日和、君、坂本龍馬と繋がっていたのか……?」
総司の方を見ると悪意がこもった眼差しでこちらを睨みつけていた
「ち、……っ、そう、じ」
「さわるなっ!」
払いのけられた手は行方を失った
なんで出てきたの、どうして?どうして?それだけが頭をぐるぐると回っていた
「日和、今日の夜、力の強い禍罪がでる。」
「え……?」
「なに!?お前、なぜその存在をっ!!!」
隣では刀の柄に手をかけている総司が目を見張っていた
龍馬は総司の方は一切見ずに僕の目をじっと見つめてくる
「……おまん次第じゃ」
「りょう……っ」
さっきまではそんなに多くなかったはずなのに道には沢山の人で埋め尽くされていて、龍馬の姿はすぐに見失ってしまった
「ねぇ、どういうこと?なんで僕たちと敵対関係にあるはずの坂本龍馬とつながりがあって、しかも禍罪の存在を知ってたの?君は、……なんなの?」
なんなの、っていう言葉に、いろんな意味を感じた。
なんでなのって、でも、僕は答えられなかった
総司はそんな僕に背を向けて屯所のほうへと足を進めたんだ
「まってよ、総司、総司!!!」
人ごみをかき分けて走る
今追いかけて、引き留めて、話して弁解できる自信なんてないけど、でも追いかけなきゃダメだって、そう思ったんだ。
だけど、人と建物に阻まれた視界は、易々と総司の姿を隠してしまった。
その後屯所にて
「そう、じ??」
「総司いるー?」
「総司見かけなかった?」
「いないっ……」
部屋にも道場にも食堂にも総司の姿はなかった。
「屯所に先に戻ったはずじゃあ……」
部屋で両手両膝をついてうなだれた
ほかに行きそうなとこなんて思いつかないよおお……
「ううう……」
「おいそんな恰好で何をうなってるんだ?」
「ううわあああっ!」
突如後ろからかかった声におもわずとびあがってしまう
後ろには呆れた顔でこちらを見ている土方さんがいた。
「そんな驚くことでもねぇだろ。ちゃんと入るときに声もかけたさ。そんなんでも気づかないほど何を悩んでるんだ?」
「……っ、え、-っと。」
土方さんに知られたらまずいかもしれない、
そう思った日和は苦笑いするしかなかった
そんな日和をみてどうおもったのか、土方さんは一瞥した後に聞いてきたのだ。
「おい、そういえば朝飯も食わねえで連絡は出かけてきますっていう紙だけ。総司と二人でどこへ行ってた。それに総司はどこだ」
今一番答えたくないことを。