世界の終わりに
私と教授の5日間が始まった。
まず私は彼の作業場の台から目覚めると
家から200メートルほど離れた井戸にいって顔を洗った。
人間は顔を洗うことで目覚めるのだと
教授に教えられた。
外にでて気づいたのだが
私たちの住まいはとても小さな木造の平屋だった。
部屋はリビングと作業場、そしてトイレしかない。
風呂がないので教授は井戸で身体を洗うらしい。
「では、私もここで、躰を洗います」
私は目の前の井戸を指差して言った。
ー……いや、君は……。君は、キッチンで水をくんで、僕の作業場で躰を拭きなさい。髪の毛は僕がキッチンで洗ってあげるから。
困ったような顔をした教授が、私の顔を見て言った。
どうして、彼はそんな顔をしているのだろう?
「では、私の躰も教授が拭いて下さい」
ー……それは…………。君は、1人で躰を拭ける。僕の手はいらない筈だ。
そういう設定だったから。
私はしぶしぶ彼の意見に賛同した。
正直、この男はとても面倒くさい。
それに我が儘だ。
自分のことを手伝えと言うわりには、
私の躰を拭くことすら嫌らしい。
自分を作り出してくれたことには感謝するが、
もう少し私に協力的でもいいはずなのに。