愛してるなんて言わないで

玲二のことにも触れて来ない。

翔太さんは本当に颯太を心配して駆けつけてくれたに違いない…。


「翔太さん、颯太のためにありがとう。」


お礼くらい

伝えたっていいよね…?



「俺、颯太の事好きだから…


その…

下心なしに。…だよ?」


そう笑った翔太さんに


くすりと笑い返した。



「本当にありがとう。翔太さんが来てくれた事を知ったら颯太、喜ぶ。」




******************







「まだ入院したかったな。」


退院明け、保育園に行く準備をしながらぶつくさと文句を言う颯太。



「縁起でもないこと言わないでよ」

「なんで入院したいの?って聞いてよ。」


颯太はにやにやしながら私の顔を覗きこむから


ため息混じりに聞いてあげた。



「どうして入院したいの?」


「パパと会えたから」

「そう…。


それは良かったね。

じゃあ、保育園に行くよ。」



離婚する時に、離婚後は子供と会わせないと玲二に伝えた。


玲二もあの時は「分かった」とだけ言った。


けれど、あんな形で再会をして

三日間の入院中、玲二は仕事の合間に颯太に会いに来ていた。


私は…

来るなとは言えなかった。



玲二が颯太に会いに来てくれてる間に、私は公売で自分のためのちょっとした食料品などを買いに外に出ていたから、2人がその間にどんな風に過ごしたかは知らない…。



でも分かる。


母親の私にはできない

父親としての最後の仕事をしてくれたんだということ。

離れ離れになる時には

私の勝手で既に会えなくなっていた2人は

やらなきゃいけなかったことをちゃんと、できたらしい。


< 100 / 142 >

この作品をシェア

pagetop