愛してるなんて言わないで
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知り合った当時の玲二は私にとって、住む世界の違うクラスメイトだった。
成績は学年でトップ。部活動のテニスでは何かの大会で優勝したらしく、表彰をされていて、綺麗な顔立ちからいつも女の子に囲まれている。
でも、無愛想で話しかけ難いそんな同じクラスの凄い人。
そんな私達がグンと距離を詰めたのは席替えだった。
くじ引きで決まった新しい席は…
無愛想で、私にとっては凄いけど、恐そうな人という印象の彼と、隣の席になってしまった…。
ひぃぃっ‼
赤坂君の隣になっちゃった…っ‼
「よろしくね…」
機嫌が悪いのかよく分からない低い声で呟く赤坂君。
「こちらこそ…」
とは、言いつつも
できるだけ
できるだけ
右隣を見ないように生活していかなければならないこれからの毎日を思うと…
学校に行くことさえ憂鬱に感じていた。
ただ願うのは早くまた、席替えがあることくらいだ。
できるだけ
できるだけ関わらないように生きていたいのに…
右利きの私と
左利きの赤坂君の肘は
ノートをとるたびにコツンコツンとぶつかる。
「ご、ごめんなさい。」
ぶつかる度に謝る私が…
謝りすがたからなのか…
暫くしてから突然、赤坂君は右手で字を書くようになっていた。
気づけば
ぶつかることがなくなった玲二の手元を見ると
書きづらそうに
一文字一文字に時間をかけてノートを写している赤坂君。
謝りすぎた私に気を使ってくれたのだとすぐに気付いた。