愛してるなんて言わないで
酔いも回ってきた所で、レストランの脇にスイーツが並ぶと
それを機会にみんなが立ち上がり、今度は自由に席を行き交い、堅苦しくない雰囲気へと変わる。
「ホテルのスイーツなんて久しぶりっ‼」
甘い物に目がない私。
同じ席の先輩方が立ったのを見計らって席を立とうとした時…。
「気持ち悪っ…」
そう言いながらグイっと私の手を引いたのは隣の席に座っていた沢渡先輩。
そういえば…普段御喋り好きな沢渡先輩が、妙に大人しいと思っていたら…
既に沈没してたのか…。
「沢渡先輩…お酒、弱いんですね…」
「俺が弱いんじゃない。酒が強すぎるんだ…!」
だから先輩がお酒に弱いんでしょ…。
「先輩…私もスイーツ取りに行きたいんですけど…。」
「何?結花、お前…体調の悪い俺を置いてケーキなんか食うわけ?」
私の居る方と全然真逆を向いて喋る先輩…。
お酒に弱い男は情けない…。
「ケーキだけ先に取ってきます‼」
再度、立ち上がろうとした私の手をまた、先輩が捕まえる。
酔っ払いは…
駄々をこねるちびっ子よりもタチが悪いのを…
嫌というほど、依子で味わってる私は、沢渡先輩の不思議行動と同じような物を何度も見てきたから…
こういう酔っ払いに捕まってしまったら最後だということも…
分かってる。