愛してるなんて言わないで

「もう一回」

「何が?」

「もう一回名前を呼んで?」

「…結花さん?」

「足りないよ。まだ呼んで?」

「どうして?」

「あなたに名前を呼ばれるのが嬉しいから」

「どうして…?」


「好きな人に呼ばれると自分の名前が特別に聞こえるからだよ」




夢はそこで途切れて


夢の中でも

翔太さんに会えた事が嬉しくて


朝方にも関わらずスッキリ目が覚めた私は

颯爽と颯太を実家に迎えに行った。



******************




「ママ、ご機嫌だね?」

「うん。よく覚えてないけど良い夢を見た気がしたの。」

「どんな夢?」

どんな夢…?

確かに良い夢だったという記憶はあるけれど

夢の内容はいつの間にか忘れていた。



「きっと颯太とラブラブする夢だったと思う。」

「えー?本当?

僕もママとラブラブする夢見たよ?」

「本当?嬉しいな」


2人で鼻歌を歌いながら帰宅すると

会社から封筒が届いていた。

「なんだろう?」

「なんだろね?」

2人で顔を見合わせながら封筒の中身を取り出すと

ハラリと落ちた温泉旅館の宿泊券。



「これ、こんなに早く届くんだ…」

「なにそれー?」

「温泉にタダで泊まれる券」

「えー?凄いね⁈」

「ママの会社の人のおかげなんだけどね?

颯太、温泉行きたい?」

「行きたい行きたい‼」


「あ、来週の土曜日ってら決まってるみたいだよ?」


「じゃあ来週の土曜日だね⁈」

「うん決まり‼」

颯太と2人きりの初めての旅行‼


表彰をされるほど頑張ってくれたあの営業マン様様です。



初めての旅行は

とびきり良い思い出を颯太と作りたい。





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