愛してるなんて言わないで


休み明け

先輩方にあんな口の聞き方をしたのだから…

今日からどんな壮絶な虐めが待っているのかと…

胃をキリキリ痛ませながら会社に行った。



年配の方々は経験が豊富なだけに、シングルという私の状況を理解してはくれていても…


この間、私に毒を吐いたあの先輩方に限っては…

そうではない。


全ての人に理解を得られる訳じゃないことを

頭で理解していても…あんな風に言われなきゃいけないとは思わない。


バツイチだから肩身を狭く生きていかなきゃいけないなんて…

思いたくない。



もしも私がシングルという肩書きで偏見にさらされて、それに負けてしまったら…

颯太に申し訳がない。





堂々と

堂々としてればいい。


「おはようございます。」

できるだけ明るく、事務所の戸を開けると

「おはよー」といつもと変わらない風景がそこにはあった。



「結花さん、新しい企画を企てるから、今日からチーム編成があるみたいだよ」

「そう…ですか?」


あの日の事なんか無かったかのように

いつもと変わらないみんなの様子に、少し拍子抜けしながら、自分のディスクに向かうと、隣にいる沢渡先輩だけは、気まずそうに声をかけてきた。


「結花、俺酔っ払って失礼な事したみたいですまんっ‼」


「えっ?

いや…

大丈夫です…。」

「許してくれるの?」

「ええ…まあ…」


沢渡先輩の態度なんか

自分の暴言騒動でスッカリ忘れていたくらいだ…。


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