愛してるなんて言わないで
パソコンを立ち上げていると
主任と…社長が一緒に現れて、一瞬、事務所内が静まり返る。
朝から社長が直々に支社に来るなんて…
珍しすぎることなんだ。
一瞬、翔太さんと目が合ったけれど、直ぐに逸らされる。
まあ、そりゃそうか…
関わりを持ちたくないと言ったのは私の方だったんだから…
それでも赤ら様にそんな態度をとられると
胸がチクリと痛む。
「これから、朝礼を初めるが…
この間の表彰式の件で社長からみんなに話しがあるそうだ。」
主任の言葉に、頷いた翔太さんは、一呼吸おいて、口を開いた。
「この間の一件を知ってる者もいれば
知らない者もいると思うが…
会社の仲間内で、差別的な言動があった。
家庭の事情は人の数だけあると俺は思ってる。
子供染みたやり方で仲間を傷つけるような奴がいるなら
うちの会社にそんな奴は要らない。
今後、そのような出来事があれば、どれだけ会社に貢献してくれてる優秀な社員でも、即刻排除する。
お互いを向上させあい、
高め合い、共に働く戦友である事を頭においておいてもらいたい。
これは…ここのオフィスのみんなだけではなく、他の支社にも行って話そうと思ってる。
より良い環境をみんなの手で作り上げて、より良い仕事をこれからもお願いしたい。」
いつも笑顔の翔太さんの
険しい表情を初めて見た気がした…。
翔太さんの口から「排除」などという言葉が出た事にも驚いた…。
「30分、休憩をやるから気持ちを切り替えて仕事に励もう。」
主任の言葉に
その場の緊張が緩むと
静かに事務所を出て行く翔太さんが視界に入って
思わず後を追いかけた。