愛してるなんて言わないで
「社長っ!」
私の呼びかけに振り返った翔太さんは
いつもの優しい笑顔で振り返る。
「…どうされました?」
「あの…この間の件…売り言葉に買い言葉で…。
私も冷静さに欠けていたと思います…。
周りを不愉快にしたこと…
申し訳ありません。」
頭を下げる私に
ゆっくり近づいて来る翔太さんは
優しく笑った。
「伝えてくれるのはそれだけ?」
「…へっ?
他に…何かありますか…?」
きょとんとする私に、困ったように笑う彼。
「覚えてないならいいけど…」
「何がでしょう?」
「いや、こっちの話し。」
「そうですか?じゃあ…これで失礼します。」
もう一度頭を下げて、事務所に戻ろうと踵をかえしたら
「やっぱり待って」
不意に呼び止められて振り返る。
「社長…?」
「どんなに嫌な事があっても負けないで…?
その度に、俺が君を守るから」
「えっ…?」
すると突然、手を引かれて
ビルの影まで連れて来られると
きつく抱き寄せられる。
「し、翔太さんっ⁈
誰かに見られたらどうするんですかっ⁈」
腕を突っ張って体を離そうとしても
男の人の力には敵わない。
苦しいと感じるほど強い力で抱きしめられる体…。
「もう…結花さんを前にして、触れたい気持ちを我慢するのが辛い…」
「なっ‼何いってるんですかっ‼
セクハラ⁉
セクハラですよっ⁈」
「何がセクハラだよ…
せっかく諦める努力をしてたのに…
俺を好きだと言ったのは結花さん…
君だろ?」
「私が…いつ、そんなこと…」
言いながら
お酒に酔っ払って見た夢の内容が
突然、鮮明に蘇る。