愛してるなんて言わないで


「おじちゃん、遊ぼう」

そう言って社長の手をとった颯太に、注意しようとした時

「だから翔太君って呼んでよ。お邪魔しまーす」

なんて、私の返事も聞かずに勝手に入り込んだ社長には…心底困ってしまう。


颯太も颯太だ。

後でちゃんと注意をしなきゃ…。




颯太に手を引かれ入って行った社長の靴を揃えながら

ぼんやりと、初めて湯川社長に出会った日のことが頭の中に浮かんでくる。


社長と出会ったのは1ヶ月前…


あの時の私は彼が何者かも知らずにいた。



知ってたら…


断ってたに決まってる。







「麦茶しかないんですけど…?」

リビングで颯太をかまってくれている湯川社長に声をかけながら、本当に麦茶しかないので、グラスに注いでテーブルに置く。


「ありがとう。」

車で遊びながら返事をくれる。そんな二人を見ていると…


胸の奥がぎゅっと締め付けられるように…


悲しい気持ちになる。



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