愛してるなんて言わないで



「颯太、寝たよ」

子供部屋から静かに出てきた社長が、颯太をお昼寝させて、リビングに戻ってくると、私は頭を下げた。



「子供の面倒を見させてしまってすいません。」


「颯太、元気そうだけど…手のひらとかやけに熱いからまた、熱が出るかもしれないよ?」


「気にかけて下さってありがとうございます。」


お礼を言いながら、社長が颯太をかまってくれてる間に作った簡単なお茶菓子を用意すると

「さすが結花さん。できる主婦は違うね」

そう言いながら、少し膨らみに欠ける歪形で、出すのも少し恥ずかしいココアケーキを、丁度いい甘さだと褒めてくれるから…


目のやり場に困る。




主婦になってから…


一度でも誰かに褒められたことなんかないんだから…


面と向かって言われると恥ずかしくなるのは当たり前だ…。


「できる主婦なんかじゃあまりませんよ。

炊飯器で作った手のこんでないものです…」


「炊飯器で⁈…ケーキが作れるの?」

驚きながら聞いた社長に「ケーキらしいケーキじゃないですが…」と、自分の器量の悪さにもっと恥ずかしさが込み上げる。


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