愛してるなんて言わないで
「結花さんは、初めて会った日のように気楽に接してくれないんだね…?」
「私だってあなたが、自分の務める会社の社長だとしってたなら…最初から断ってました。」
言い切る私の言葉に苦笑いを浮かべる社長。
「俺は肩書きのせいで、結花さんにフラれちゃうんだ…?」
理由がそれだけじゃないことは何度も伝えてきた…。
「颯太がいるのに母親の私が恋愛なんかできないんです…
一度、結婚に失敗して…
壊れたものを買い換えるみたいに簡単に新しいパパだよ。なんてそんなこと…
親として颯太にしたくない。」
「それなら…
好きな気持ちを止める方法を教えてくれるなら諦めてあげる。」
そう言って立ち上がった社長は、子供部屋で眠る颯太の様子を見ると「帰るね」と玄関に向かう。
その後ろを黙って着いていき「今日はご迷惑をおかけしました。」と頭を下げた私の頭を軽くぽんぽんと叩く。
「結花さん、無理はしないで?困ったことがあればいつでも駆けつけるから」
「お気遣いありがとうございます…」
頭を下げたままの私に
「愛してる」と囁き
社長はいなくなった。
そういうのが本当に
迷惑なのに…。