愛してるなんて言わないで
依子は私にもそんな話しはしていなかった。
私の勤め先を知っているのだから…それが自分のお兄さんの会社だということは依子は確実に知っていたはずなのに…。
「でも…驚いたけれど…特別、問題にすることはないよね?」
確かめるように、眉を下げて笑う彼に私は首を横に振った。
「問題なら…ある。」
「なに?どんなこと?」
「それは…
私たちお互いに、少しでも特別な感情があること…かな?」
「それは…俺が結花さんの勤めてる会社の社長だから問題があるわけ?」と、少し不服そうに聞いてくる。
問題として取り上げるなら、たくさんのことがあるかもしれないけれど…
翔太さんが自分の務める会社の社長だったことが、私のなかで問題事の決定打となってしまった。
最初から…
今以上の関係なんか望めなかった。
けれど、彼が「社長」という大変な立場なら…
望むことさえ許されない。