愛してるなんて言わないで


「軽い気持ちで妹にそんな話しをしたんじゃないと、妹の私は思うよ?」

「…うん。」


「結花の好みを知ろうと必死で電話かけてくるんだけどさ、お兄ちゃんからこんなに頻繁に電話かかってくるなんてはじめて。

いつから翔太はシスコンになった?ってお父さんが呆れてる。」


「勘違いされてるんだ。可哀想」


くすくす笑いながら

好きな人の話しをするのはどれくらいぶりだろうか…。


この数年、依子に電話をかける時の私はいつも泣いていた。


愛のない生活にいっぱいいっぱいで、何を愚痴りたいのかも分からないのに、スッキリしたくていつも依子に迷惑をかけていた。



「お兄ちゃん、猪みたいに猛突進で攻めてるみたいでごめんね?」

「依子が謝ることじゃないし…

正直に言うと…翔太さんの気持ちは嬉しいんだけどさ…」


言葉に詰まった私の代わりに依子が呟いた。


「嬉しいんだけど…無理なんだよね?」


優しく頬笑む依子に

泣きそうな気持ちをグッと堪えて頷いた。



「友達だもん。結花の気持ちは分かってる。

まだ離婚して1年ちょいで、新しい恋に進むなんてできないよね?

しかも最初の結婚であんなにボロボロになったんじゃあさ」


「依子…」


愚痴の電話をしてた時もそうだった。

依子は私の気持ちを一つ一つ汲み上げて話しを聞いてくれるような子だった。


そういう優しさは

翔太さんと、依子、兄妹でとても似ていると感じる。



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