愛してるなんて言わないで
「颯太は俺にとっても大切な子供だからな。
でも…俺には新しい家族ができていて、ちゃんと子供も産まれる。
その子をちゃんと幸せにしてあげるには、やっぱり生活が大変すぎると困るんだ。
結花も働いてるみたいだし、養育費の減額の申し出は俺も引き下がれない。
だから…調停をひらこうと思ってる。
本題はそっちのほうで、裁判所から突然、連絡があるよりは心の準備ができるだろうと思ってね…」
「なにそれ?優しさのつもり?」
颯太を大切な子供だなんて…
すてておいて、よくそんな口が叩けるものだ。
大切にする努力もしないで
大切な子供をまともにかまいもしないで…っ
口先だけのセリフなら本当に…
相手をただ傷つけるだけとも知らないで、この人はよく私たちを傷つけた。
「調停の件は分かりました。そのうち裁判所から通達が来るのね…?」
調停…。
離婚と今回とで裁判所からお呼びがかかるのは人生で二度目だ。
本当に…
この人とはくだらない思いでだけが残る。
「悪い、ちょっとトイレ…」
そう、元旦那が席を立った瞬間、ため息がこぼれる。
私…一体なにをやってるんだろ。
結局、この人は自由になって自分のために新しい幸せを手にしようとしているのに…。
私と颯太を犠牲にして
新しい幸せを手にしようとしてるのに…
呆れなのか…
想像を遥かに超えての失望なのか…
涙さえでてこない。