愛してるなんて言わないで
そんな時、テーブルに置かれたままの元旦那の携帯が鳴った。
視界に入って見えてしまう限りでは相手は会社の同僚のようだ。
私も何度か会ったことがあるから知っている。
知っているのか知っていた…なのか。
元旦那と関係を断ち切ったことで、関わった人間とも関わらなくなる。
1年ほど前には「主人がお世話になっています。」と私が言っていた相手に
きっと今は
あの愛人だった女が以前の私と同じように言ってるに違いない…。
思い出が交差するたびに
苛々が募る。
何もかも忘れたいのに。
電話を受け取る相手がいない電話はすぐに切れて、待ち受け画面に変わる。
画面が変わった瞬間
時間が止まったかのように
画面に視線が奪われた。
待ち受け画面の壁紙に映されてる
その写真が…
私の知らない
颯太の写真だった…。
今よりも少し幼い颯太の笑顔。
画面が暗くなるのと同時に消えた。
なんで…?
颯太の写真が待ち受けになってるの?
だって…
この人は
本当に一切、家庭を顧みないで…
子供の世話ひとつしないで…
いつも
私を孤独にして…
颯太の存在なんか忘れてるふりをして…
それなのに…
どうして?
鼓動が
異常な音をたてて加速する。