愛してるなんて言わないで


硬直したまま動けない私のもとへ元旦那がお手洗いから戻ると

腕時計を確認した。


「最後に1つ確認したいんだけど…?」


「な、なに?」


鳴り止ま無い鼓動が…

この人に聞こえていないかと不安で、焦る。




「颯太は保育園の友達と遊んだりしてるのか?」


「えっ?あっ…ええ。プライベートで遊ぶ友達なら何人かできたけど…」



「そうか、それなら良かった。来月は颯太の誕生日があるから。

直接は渡せ無いけれど…

俺からだって言わなくていいから、俺から最後のプレゼント、渡しておいて?」


「えっ?プレ…ゼント?」


まさか…


だって

颯太の誕生月さえ忘れてたはずでしょ?


元旦那から

電気会社のメーカーの紙袋を渡される。


「なに…これ?」

「携帯ゲーム機。今時はゲーム機持ってないと周りの友達との遊びになかなか入れないものだって…聞いたから。」


「そう…なんだ?」


「じゃあ、俺、行くわ…。」

「あ…ありがとう。」


驚きを隠せないまま


それでも笑った私に


去り際、元旦那が呟いた。


「お前もそうやっていつも笑顔でいてくれたなら…

良かったんだけどな。」



< 69 / 142 >

この作品をシェア

pagetop