愛してるなんて言わないで



「ねえ、颯太、颯太はママのどんなとこが好き?」


「んー…とねぇ…」

ハンバーグを食べてる颯太は上機嫌な表情で首を傾げる。



「笑ってるところ‼」

「笑ってる…ところ?」





******************


「ズバリ結婚の決めては?」

結婚報告の飲み会で、玲二の友達がからかいながら質問をした。


「私は…玲二の優しいところ?かな」

照れもせずにそう答えた私を見て


玲二も答えた。

「笑顔だな。」




普段、2人でそんな会話をした事はなかった。


高校時代からの長い交際期間の中で


2人が結婚にたどり着くのはごく自然なものだった。


不器用で、口下手で

2人きりでいる時は、いつも私が一人で喋っていて

玲二はそれを「うん。うん。」って静かに聞いていて

話しの最後に必ず

「今日も楽しかったみたいで良かった」


そんなお決まりの言葉で締めくくる。



口下手な彼に「私のどんなとこが好き?」なんて聞いたことなんかなかった。



だから笑顔だと言われた時は、玲二が私のことをそんな風に思ってくれてたことを知って…

すごく嬉しかった。


嬉しくて


つい


2人きりになった時に調子にのって聞いたんだ。


「笑顔だけで足りるの?」

そう聞いた私に


「結花の笑顔が毎日、隣にあるならそれだけで幸せに生きていけると思うんだ。」

口下手で

不器用で

隠し事が下手な玲二からの精一杯の愛情が

これ以上ないくらいに伝わった。


そんな瞬間だった…。


******************



「何が悲しいの?」

「えっ…?」

「ママ、泣いてるよ?」

「えっ?嘘っ⁈やだっ…」


慌てて涙を拭って笑って見せた。



「うん。やっぱり笑ってるママは1番可愛い‼」



「ありがとう。颯太…。

ありがとね。」


颯太は…



やっぱり



あの人の…


玲二の子供だ。


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