愛してるなんて言わないで
「ママは颯太の…優しいところが大好きだよ。」
そう
私が大好きだった頃の玲二と颯太は
そっくりだ。
そっくりだったんだね…。
ずっとずっと…
この4年…
もうそろそろ5年か…。
ずっとずっと気づかなかったよ。
…
気付けなかったよ。
私…
馬鹿だから。
自分のことしか考えてなかったから…。
私の笑顔が好きだと言ってくれたあの人に…
いつからか笑顔を向けなくなってた。
結婚生活の中で
自然と失ったのは
私の笑顔だけじゃなかった。
私の笑顔が失ったのと同時に
玲二の幸せも
失われていたんだ…。
ねえ
そんな事にも気付いていなかった。
気付けなかった。
玲二の浮気の原因は…
私にもあったのかもしれない。
玲二が私を追い詰めたように
私も玲二を追い詰めていたのかもしれない。
「明日の夕飯は何食べたい?」
「ハンバーグ‼」
「却下‼」
玲二はもう
颯太の笑顔をあの待ち受けでしか見れない。
でも、こうして私は目の前で颯太の笑顔に会える。
もしかしたら…
颯太の親権を持てたのは…
あの人の
私に対する最後の優しさ…だったのかもしれない。