愛してるなんて言わないで
小走りで玄関のドアを開けると
ケーキの箱を持った依子が立っていた。
「依子っ⁉」
「お兄ちゃん、お邪魔してるでしょ?
退院する予定なの知ってたから車で迎えに行ったら、子供を連れた若い奥さんと…って聞いたから
絶対に結花んちに上がり込んでるなって思ったの。
はい。お土産のケーキ」
私にポンっとケーキの箱を渡すと、スタスタの中に入り込む依子。
すぐに、翔太さんの驚いた声がした後に。
嘘の病気の件での喧嘩の声が聞こえてきた。
なので、2人が兄妹喧嘩をしてる間に私はアイスティーを淹れてお茶の準備。
ケーキの箱の中には…
うん。
さすが依子。颯太の大好きなモンブランが1つ。ちゃんと入ってる。
颯太はあまりケーキが好きじゃないけど
なぜかモンブランだけは気付いたら食べるようになっていた。
だから、ケーキはモンブラン。で颯太は決まってる。
兄妹喧嘩が終わった頃合いを見計らって、用意したケーキセットをテーブルに置いていく。
「あっ、今日の結花オススメのお茶は何?」
身を乗り出して聞いた依子。
「今日は、ストックがなくて、残ってたアールグレイ」
「結花さん、紅茶が好きなの?」
私と依子の会話に入ってきた翔太さんに
「あれ?知らなかったの?玲二さんなら何も言わずに必ず結花には紅茶をだしてたのに」
依子の思わぬ発言に
カップを持つ手をピタリと止めた。
翔太さんの顔が
見れない。
なんで
寄りにも寄って、元旦那の名前をだしたっ⁈