愛してるなんて言わないで
翔太さんの顔を見れなくて…
ちらりと依子に視線を向けると。
やっぱり…。
試すような意地悪な笑顔を浮かべて
紅茶を啜っている。
その表情…。
やっぱり2人、似てる…。
「玲二さんって?
…結花さんの別れた旦那さん?」
翔太さんの視線が、グイグイ突き刺さる…。
気まずいけれど
小さく頷いた私に
「そうなんだ?まあ、好きなものなんて一緒に過ごしてく中で、俺だって知るチャンスがあるでしょ。」
翔太さんのこの反応は…
とても意外で
思わず顔をあげて、彼の顔をマジマジと見つめてしまった。
だって…
普段の翔太さんなら…
付き合ってもいないのに
小さなことですぐに妬いてしまう人だから…
その反応は…
本当に予想外だった…。
「結花、お兄ちゃんなんで胃炎になったか知ってる?」
「えっ…?何か原因があったの…?」
首を傾げた私の横で
「言うな!絶対に言うな!」と慌てる翔太さん。
またしても兄妹喧嘩が勃発。
こうして三人で会うのは初めてだけど
ハタから見ると
本当に仲の良い兄妹だわ。
きっと、とても良い環境で育ったに違いない。
ソファーの上で眠ったままの颯太を子供部屋へと移動する。
もしも颯太に
あんな風に仲良く喧嘩ができる兄弟がいたら…
きっと…
今よりももっと幸せなのかもしれない。
一人っ子にしてしまった。
それもまた
私が背負わなきゃいけない後悔なのかもしれない。