愛してるなんて言わないで
リビングに戻ると、喧嘩は終了していて、依子は来たばかりだというのに、もう帰り支度を始めていた。
「あれ?依子、もう帰っちゃうの…?」
「うん!お兄ちゃんの魔の手から守ってあげれる時間があまりないの。
これから合コンだから!」
「人を色魔扱いするなよ」
翔太さんの言葉に、意味あり気にニヤつく依子。
「結花も、体が淋しくなっなら合コンに誘ってあげるから言ってね?」
「えっ⁉
あ…
うん?
ありがとう?」
「結花さんを合コンに誘うなっ‼
そして結花さんもありがとう。なんて言ったらダメっ‼」
「はいはい。じゃあまたね」
興奮する翔太さんを置いて
依子が帰った後は突然、部屋の中が静まり返った。
もしかしたら依子は翔太さんの体を心配して様子を見に来たのかもしれない。
もしそうなら…
本当に羨ましいくらい仲の良い兄妹だ…。
一人、頷きながら紅茶を飲んでいると
翔太さんからの視線が痛いくらいら突き刺さる。
「どうか…しましたか?」
「結花さん…合コンに行きたいの?」
不貞腐れたように呟く翔太さんは面白い。
「行きたいとは思わないけれど、合コンなんて行った事がないから、どんな感じなのかな?くらいな興味なら…あるかな?」
「あんなものは行かなくてもいいよ…」
ため息混じりに呟く翔太さんの言い方は。
合コン経験者のようなセリフだ。
でも、あまりそんな話しは聞きたくない。
「でも…行きたいなら行ってみればいい。」
「へっ?」
「俺にはそれを止める権利はないし…。
それに…
結花さんがそういう場で出会いを求めたいと思うなら…」
俯きながら…
消え入りそうな声。
やっぱり
久しぶりに会った翔太さんはどこか違う…。