愛してるなんて言わないで
「興味があるだけで、行きたいとは思わない。
颯太を置いて、淋しい思いをさせてまでそんなことしたくない。」
「そっか…」と呟いた翔太さんは、それでも浮かない顔をしてケーキを口に運ぶ。
「社長…何かあったんですか?
なんか…いつもと違う。」
聞いても良かったのだろうか…。
何の気なしに聞いたつもりだったけれど、今の質問で、翔太さんはもっと暗い表情になってしまった。
「…少し、考えてたんだ。
結花さんに言われたこととか…。
俺のほうが結花さんより歳は上だけど…
俺よりも結花さんはやっぱり、大人だ。
子供みたいに、欲しがるだけじゃあ…
相手にされないって。
だから、結花さんに…少しでも認めて貰える用にならなきゃいけないと思ったから…」
翔太さんらしくない言葉だ。
子供のように真っ直ぐて
何にもブレずに、前を見つめる。
自分の気持ちに素直なのが
翔太さんの魅力だと…
私は思っていた。
私のせいで、翔太さんが自分の魅力に欠けるような、マイナス思考をしてしまったのかと思うと…
少し、申し訳ない気分にもなる。
でも、まあ…翔太さんの言うように
翔太さんに私を止める権利がないのは事実だけど…
その事実は…
触れてしまうと淋しくなるから…
あまり触れずにいたいものでもあった…。
「結花さんの元旦那さんはカッコいい人だね…?」
「えっ…?」
思わず
ぶつかった視線を逸らすことができずに息をのんだ。
「ごめん。…依子に頼んで高校時代のアルバムとか…
見せて貰ったんだ…」
「あっ、アルバムっ⁉」
…
昔の私も見られたに決まってるっ‼
それは元旦那を見られるよりも恥ずかしいかもしれないっ‼
「なんで見るのよっ‼」
「結花さんが好きになった人がどんな人なのか知りたかったんだっ‼」
「そうじゃなくてっ…
いや、そうなのかもしれないけど…
昔の私も見た?…んでしょ?」
おずおず聞いた私に、翔太さんは一瞬、きょとんとした顔をした後に、すぐ、にまにまと笑った。
「もちろん見た…。あどけない感じで可愛かったぁ…」
過去を見られるということが恥ずかしいことだということを、翔太さんは知らないんだっ‼
本当に恥ずかしいっ‼