愛してるなんて言わないで
「アルバムを見た時にけっこうショックだったんだ…。」
私の方がショックを受けたわ…。
「結花さんは面食い?」
「えっ…?」
「かっこいい人が好きなの?」
消え入りそうなほど小さな声はとても弱々しくて、怯えている子犬のようだ。
確かに、玲二は学生時代、取り巻きの女の子が周りにいるような男子だった。
美人なお母さんにそっくりな甘いマスクに、無口というキャラが彼をクールな印象にさせて、彼の魅力を最大限に引き出していたように思う。
不器用だったから人付き合いは好きな方ではなくて、黒猫のような雰囲気を周囲は抱いていたかもしれない。
狭く深い付き合いを求めるタイプだった玲二は、心を開いた相手には、それでもけっこう素直に話しをするような人だった。
そんな彼の周囲に見せない優しさに触れると、本当に自分だけが彼の特別な存在なんだと思わせる幸福感を与えてくれた。
でも、だからと言って…
玲二をそんな風に見る社長はだいぶ、自分を卑下するような見方をしている。…と、私は思う。
「私が好きになったのはあの人の顔だけじゃないです。」
それは見た目もあったかもしれないけれど…
私が玲二を好きになったのはさり気なくくれる、些細な優しさだった。
「誰かと自分を比べたりするような事は…しないほうがいいと思います…よ?
だって社長には
社長にしかない魅力がたくさんあるじゃないですか?」