愛してるなんて言わないで
だから
迷う権利も
翔太さんの気持ちを引き止める権利も私にはない…。
彼を
ちゃんと解放してあげなきゃいけない…。
「翔太さん、会うのはもうこれで終わりにしよ…?」
「えっ…?」
目を見開いた翔太さんが
震える声で聞いてきた。
「なんで…?」
「んー…やっと結婚とかそういうのから解放されたから…
自由でいたい…かな?
颯太と2人のほうが気楽だし
翔太さんがうちに来すぎて、颯太が勘違いしても困るから。」
泣いたら…だめ。
こういう時こそ
結婚生活で習得した冷たい眼差し‼
「迷惑ってこと…?」
今にも泣き出しそうな翔太さんを
見るのが辛い。
でも、翔太さんの辛さは
今
この瞬間だけ。
きっとすぐに良い人が現れる。
だから
ちゃんと幸せになってよ。
泣かないから。
涙なんか見せないから。
涙を見せないことが
私から翔太さんにあげれる
精一杯の
愛情表現だから…。
「うん。迷惑かな」
無神経なほど、笑って見せた私に
翔太さんは小さな声で「分かった」そう呟いた。
彼がいなくなるまで
笑顔を崩さないで。
さよならなんかは言わなかった。
言えなかった。
そんか私のわがままを
最低な女だと思って
忘れて欲しい。
愛してる。
愛してるから…
幸せに
なって。
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静かに扉の閉まる音がして
翔太さんのいなくなっこの部屋は
灯りを失ったかのように薄暗くなる。
扉に耳をあてて
遠のいてく足音を
確かめて…
ようやく
堪えてた涙が
落ちて行く。
音も立てずに
彼に聞こえないようにと…
静かに落ちて行く。
「翔太さんが…
好き。」