愛してるなんて言わないで
少しの沈黙を
一際盛大な颯太の歓声が破った。
「凄いっ‼凄いっ‼凄いっ‼
ゲームだっ⁉
僕との約束、パパ覚えてないたんだっ‼」
そう言いながら青色の携帯ゲーム機を私に見せる。
「えっ?
約束…?」
「うん‼パパと約束したの‼」
「えっ?
いつ?
そんなのママ、知らないよ⁈」
すると颯太は首を傾げる。
「えー?だってママがいない時だもん。」
「ママがいない時っていつ?
最近?」
「ううん。たくさん前だけど…」
あまりにも私が驚いて質問責めにしたものだから、颯太は
私の顔色を伺うように声を小さくする…。
「ママ、怒ってるわけじゃないよ?
ママの知らないところでそんな約束してたなんて、知らなかったから…
驚いただけ。
いつ、約束したの?」
結婚生活の中で…専業主婦だった私は常に家にいたけれど
2人がそんな会話をしているところなんて聞いたことが無かった。
「ママがお祝いしにいった時。」
お祝い…?
そう言われて…
必死に思い出の引き出しを開けていく。
もしかしたら…
颯太は私が結婚生活でたった一度…
友人の結婚式に行った日の事を話してるのかもしれない…。
そうだ…
言われてみれば一度だけ
玲二に颯太の子守を頼んだ事があった。
でもあの日は…
実家に預ける予定が、突然両親の都合で颯太を預かって貰えなくなって…
夜勤明けで寝てた玲二を叩き起こして子守をお願いした。