愛してるなんて言わないで
玲二を見て
爽やかな笑顔を向ける翔太さん。
「ええ、結花さんは妹の友人でもありますが
俺は彼女の上司です。
公私共に親しくさせていただいています。」
「…そうですか。
まあ、僕はもう関係のない立場ですが、彼女とは深い付き合いでして…
彼女はとても精神的に弱い女性で、ご迷惑をおかけすることもあると思いますが、お願いします。」
翔太に頭を下げた玲二は
「友人が来たなら仕事に戻る」
そう言って私達を置いていなくなってしまった…。
私の隣に何も言わずに腰を下ろした翔太さんと
会話もする前に、颯太を診てくれていた医者に呼ばれる。
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ちゃんとした検査結果がでるまで数日かかるらしいけれど…
担当医からの説明は、さっき玲二から聞いたものと変わらなかった。
既に病室に移されていた颯太の腕には点滴の針が刺さっていたけれど、呼吸は戻り、気持ち良さそうにぐっすり眠っている。
「個室ですので、もしもお父様もお母さんも2人で付き添われるのでしたら、ベッドを1台追加しますのでお知らせ下さい」
看護師が病室を出たあと、すぐに
翔太さんと目が合った。
「勘違いされちゃったな?」
「そりゃあ、こんな風に2人でいたら勘違いしちゃうかもしれないですよね」
苦笑いが零れる。
久しぶりに会った翔太さんは
やっぱり翔太さんだった。
「ご心配おかけしてすみませんでした。」
「いや…俺も…迷惑になると知っていながら…
颯太に何かあったのかと思った途端にそれさえ忘れて飛んで来ちゃった。
ごめん…。」
「いえ…」
次に繋がる言葉が見つからない。
重たい沈黙が2人を包む。