もしもサンタがいるのなら
ガチャ、と目の前のドアがあく。

中から出てきたのは勿論喬司で。だけど、一瞬喬司じゃないように見えた。

「ど……したの、それ」


IT関係の会社に勤める喬司は普段からラフな服装で出勤する。なのに、見たこともないしっかりとしたスーツを着て立っていて。

そして、手には……沢山のバラの花。


この場にそぐわなすぎて、喬司の姿が浮いて見える。


なにこの感じ。


「睦美、俺と結婚してください」


……へ。


何度も、何度も、夢にまで見たプロポーズ。


なのに、いざとなったら気の利いた台詞なんて出てこなくて。


「は、い……」


寒さと驚きとでカサカサになった唇から、辛うじて返事をするなり、ぎゅっと喬司に抱き締められる。
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