もしもサンタがいるのなら
思いがけない言葉に驚きと喜びを隠せなくて、思わず手の中の指輪を握り締め、口許に持っていく。


「はい、手を出して」


その手を開かされて、薬指に指輪をはめてもらう。


「「……おお」」


あまりにピッタリで、二人の声が揃い、顔を見合わせて笑う。


だけど、時間は迫ってきていて。

このまま会社を休んでしまおうか、と社会人失格の考えが頭をよぎるも、それを見透かしたかのように喬司がおでこにちゅっとキスをしたあと、そっと一歩後ろに下がる。


「よし、じゃあいってらっしゃい」


「……ん」


名残惜しいけれど、仕方がない。


見慣れないスーツ姿の喬司に見送られる形で、歩き出す。


「あ、バラ……」


見送ってくれる喬司の足元には、指輪をはめてくれるときに置いたバラの花束があるわけで。
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