コント集「鬼ヶ島に行きたくない桃太郎」
おばあさん「まあ、何でもものの成り立ちを知るのは、大事かもしれないけど…それにしても、万葉集はさすがにいいでしょ」

桃太郎「万葉集はホントいいんですよ、おばあさん」

おばあさん「どこが?畑仕事関係ないよね?」

桃太郎「大アリです」

おばあさん「嘘つけっ。土なんて触ったことすらない貴族たちが詠んだ歌でしょ?関係あるわけないじゃないか」

桃太郎「分かってないなぁおばあさん」

おばあさん「何さ」

桃太郎「この万葉集にはね、僕たちのような庶民が歌った歌もあるんですよ」

おばあさん「まさか!」

桃太郎「本当です。え~~~と、どこだったかな…あった、これだ」

おばあさん「本当に?」

桃太郎「これです」

おばあさん「字ィ読めない」

桃太郎「そうでした。ごめんなさい。この歌はね、防人として、九州に行くのに、妻や子供と離れる寂しさを歌った歌です」

おばあさん「そうなんだ…。可哀想だねぇ」

桃太郎「ね、情緒が深くなるでしょ」

おばあさん「畑仕事と関係ないっ」

桃太郎「情緒が豊かになるでしょう?情緒が豊かになれば、人に対して、想像力が働く。想像力が働けば、人生は豊かになりますよ、きっと」

おばあさん「なんか、話がうますぎるなぁ!」

桃太郎「そんな訳で、おばあさん、鬼ヶ島行きは、中止にさせて下さいっ」

おばあさん「でも、もう、幕府に申し込んで、補助金貰っちゃってるからなぁ」

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